ろすがた》のなかれけり。
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 かへらぬひと

花をたづねてゆきしまま
かへらぬひとのこひしさに
岡《をか》にのぼりて名《な》をよべど
幾山河《いくやまかは》は白雲《しらくも》の
かなしや山彦《こだま》かへりきぬ。
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 よきもの

「よきものをあたへむ」ときみのいふゆゑ
ゆびきりかまきりいつはりならじと
きみのいふゆゑ
門《もん》のそとにてきみまちぬ。

井戸《ゐど》のほとりの丁子《ちやうじ》の花よ。
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 見知らぬ島へ

ふるさとの山をいでしより
旅にいくとせ
ふりさけみれば涙わりなし。

ふるさとのははこひしきか。
いないな
ふるさとのいもとこひしきか
[#改丁、挿し絵入る、133]
[#改丁]
いないないな。
うしなひしむかしのわれのかなしさに
われはなくなり。

うき旅の路《みち》はつきて
あやめもわかぬ岬《みさき》にたてり。

すべてうしなひしものは
もとめむもせんなし。
よしやよしや
みしらぬ島の
わがすがたこそは
あたらしきわがこころなれ。

いざや いざや
みしらぬ島へ。
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 てまり

‥‥‥ひや ふや おこま
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