さん
  たばこのけむりは丈八《じやうは》っあん‥‥
とんとんとんとつくてまり
しろい指からはなれては
蝶《てふ》が菜《な》のはをなぶるよに
やるせないよにゆきもどり。
ゆらゆらゆれる伊達帯《だらり》から
江戸紫《えどむらさき》の日がくれる
‥‥‥みや よや
  夕霧さん‥‥‥‥‥
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 たもと

そつといだけばしんなりと
あまへるやうにしなだれかゝる
――わたしのたもと。

はづかしさの顔《かほ》をおほへど
つゝむにあまるうれしさがこぼれでる
――わたしのたもと。

わたしのかなしみも
わたしのよろこびも
みんなおまえはしつてゐる
――にくらしいたもとよ。
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 かげりゆく心

母にそむきしその夜《よ》より
白壁《しらかべ》によるならはせに
露草《つゆぐさ》の花さきにけり。

こゝろもとなき夕月《ゆふづき》の
夢の小径《こみち》にきえゆけば
ねもたえだえに虫なけり。
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 雀の子

とこどんどこぴいひやらひやあ
麦《むぎ》の畑《はたけ》を風がふく。

役者《やくしや》の群《むれ》をはぐれたる
子供|心《ごゝろ》のはかなさは
‥‥‥うちの裏《うら》
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