《くら》の二階の金網《かなあみ》に
赤い夕日がかっとてり
さむれば母の膝《ひざ》まくら。
[#改丁、左寄せ]
  日本のむすめ
[#改丁]

 宵待草

まてどくらせどこぬひとを
宵待草《よひまちぐさ》のやるせなさ

こよひは月もでぬさうな。
[#改ページ]

 わすれな草

袂《たもと》の風を身にしめて
ゆふべゆふべのものおもひ。
野《の》ずえはるかにみわたせば
わかれてきぬる窓の灯《ひ》の
なみだぐましき光《ひかり》かな。

袂《たもと》をだいて木によれば
[#改丁、挿し絵入る、115]
[#改丁]
やぶれておつる文《ふみ》がらの
またつくろはむすべもがな。

わすれな草《ぐさ》よ
なれが名《な》を
なづけしひとも泣きたまひしや。
[#改ページ]

 夏のたそがれ

タンホオルの鐘《かね》が
さはやかになりいづれば
トラピストの尼《あま》は
こころしづかに夕《ゆふべ》の祈祷《いのり》をささげ
すぎし春《はる》をとむらふ。

柳屋《やなぎや》のムスメは
[#改丁、挿し絵入る、119]
[#改丁]
はでな浴衣《ゆかた》をきて
いそいそと鈴虫《すゞむし》をかひにゆく

――夏のたそがれ。
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