の頭のぐるりを旋※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]してゐた。時々、ほのかな微笑が不意に、その紅いろの唇に浮かんで、何やら喜ばしい思ひが黒い眉をもたげるのであつたが、時にはまた憂への雲がそれを鳶色の澄んだ眼の上へおしさげた。
※[#始め二重括弧、1−2−54]もしや、あのひとの言ふやうな上々の首尾にいかなかつたら、どうしようかしら?※[#終わり二重括弧、1−2−55]彼女は何かしら疑念の色を浮かべながら、かう呟やいた。※[#始め二重括弧、1−2−54]もしや、あたしをお嫁にやつてくれなかつたら、どうしよう? もしか……。ううん、そんなことつてあるものか! 義母《おつか》さんだつて自分の好きな真似をしてるんだもの、あたしだつて、かうと思ひ立つたことをして退けて悪いわけはない筈よ。強情のはりつくらなら負けやしないわ。あのひと、ほんとに好男子《いいをとこ》だわ! あのひとの黒い眸が、なんて美しく輝やくことだらう! あのひとの口からもれる『可愛いパラーシュ!』つていふ言葉の優しさ! あのひとには、あの白い長上衣《スヰートカ》がとてもよく似あふわ! 帯がもう少し派手だつたら、もつと好いんだ
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