れあ、なんでも前《さき》の世からの因果で、こんな不運な憂目を見ることだべえなあ!」
「情けねえことぢや、まつたくみじめな、頼りない身の上ぢやよ!」
 かういつて教父同士は、めそめそと啜りあげて泣きだした。
「これあまた、どうしたといふだね、ソローピイのお父《とつ》つあん?」と、ちやうどその時そこへ入つて来た、グルイツィコが声をかけた。「いつたい、どいつがお前さんを縛つたんだね?」
「あつ! ゴロプペンコだ、ゴロプペンコだ!」と、ソローピイは嬉しさのあまり叫び出した。「おい、兄弟《きやうでい》、これが、そら、お前に話したあの当人だよ。それあ見ものだぞ! お前の頭よりでつかいくれえのコップを、おらの眼のまへで顔ひとつ顰めねえで呑み乾しただもの。それが嘘だつたら、この場でおいらに天罰が降る筈だ!」
「ぢやあ、兄弟《きやうでい》、なんだつて、お前はそねえな素晴らしい若い衆に恥いかかしただ?」
「この態《ざま》あ見てくんな。」さう、チェレ※[#濁点付き片仮名ヰ、1−7−83]ークはグルイツィコの方へ向きなほつて言葉をつづけた。「てつきり、お前に恥いかかした罰《ばち》が当つただよ。どうか勘弁してく
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