突つ走つたんだと訊ねると、その答へがかうだ――『嗅煙草を喫はうと思つて衣嚢《かくし》へ手を突つこんだら、嗅煙草入の代りに、悪魔の※[#始め二重括弧、1−2−54]長上衣《スヰートカ》※[#終わり二重括弧、1−2−55]のきれつぱしが出てきて、そいつが赤い焔をあげて燃えあがつたから、後をも見ずに駈けだしたんだ』とさ!」
「おやおや! さては、こ奴ら二人は、てつきりひとつ穴の狐に違えねえぞ! 両方いつしよに繋いでおくことにしよう。」
十二
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※[#始め二重括弧、1−2−54]なんで、あなた方はかう私を責めなさるんで?
※[#始め二重括弧、1−2−54]どうしてこんなにいぢめなさるんで?※[#終わり二重括弧、1−2−55]と哀れな彼が言つた。
※[#始め二重括弧、1−2−54]何をそんなにこの私をからかひなさるんで?
※[#始め二重括弧、1−2−54]ええ何を、何を?※[#終わり二重括弧、1−2−55]さういつて、ぼろぼろと苦い涙をこぼしながら、手を拱ぬいた。
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――*アルテモフスキイ・グラーク『旦那と犬』より――
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