据ゑてゐくさつたちふことだ!……」
 ここでまたしても、むつかしやのチェレ※[#濁点付き片仮名ヰ、1−7−83]ークが語り手を遮ぎつた。
「兄弟、阿房なことを言ふもんでねえだ! 悪魔を酒場のなかへ入れる馬鹿が何処の国にあるだ? 都合のいいことにやあね、悪魔の手足にはちやんと鈎爪がついてるだよ、それに頭にやあ角が生えてるでねえか。」
「ところが、どうして、そこに抜《ぬか》りはねえつてことよ、ちやんと奴さん帽子をかぶり、手袋をはめてゐくさつただもの。どうして見わけがつくもんけえ! 飲んだの飲まねえのといつて、たうとうしめえにやあ、持つてゐただけ、きれいさつぱりと、残らずはたいてしまやあがつただよ。長げえあひだ信用しとつた酒場の亭主も、やがてのことに信用しなくなつてのう。とどのつまり悪魔の奴め、自分の身に著けてゐた赤い長上衣《スヰートカ》をば、せいぜい値段の三が一そこそこで、その当時ソロチンツイの定期市に酒場を出してゐた猶太人のとこへ飲代《のみしろ》の抵当《かた》におくやうな羽目になつただよ。抵当《かた》において、さて猶太人に向つて、※[#始め二重括弧、1−2−54]いいかえ猶太《ジュウ》、
前へ 次へ
全71ページ中40ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
平井 肇 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング