たよ。これあまた青|紫斑《あざ》をこしらへられなきやあなるまいが、ホモさん、あんたにもちと具合が悪いわねえ。
[#ここで字下げ終わり]
[#地から3字上げ]――小露西亜喜劇の中より――
「こつちへいらつしやいな、アファナーシイ・イワーノ※[#濁点付き片仮名ヰ、1−7−83]ッチ! ほら、ここが垣根の低いところだから、足をおかけなさいまし。なに、心配することはありませんよ、うちのお馬鹿さんは大露西亜人《モスカーリ》に何かちよろまかされやしないかと思つて、ここの教父《おやぢ》といつしよに夜どほし荷馬車の見張りに行つてますからさ。」
チェレ※[#濁点付き片仮名ヰ、1−7−83]ークの雷女房《かみなりにようばう》はかういつて、垣根のそばにぴつたり身を寄せておどおどしてゐる祭司の息子をやさしく元気づけた。男はいきなり籬のうへに立ち上ると、物凄い、のつぽの妖怪よろしくの体《てい》で、さてどこへ飛びおりたものかと、目くばりをしながら、暫らくのあひだためらつてゐたが、やがてのことにバサつと音をたてて曠草《ブリヤン》のなかへ落つこちてしまつた。
「まあ大変! お怪我はなさらなかつたの、もしや頸の骨で
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