つた、あらゆる種類、あらゆる年代の酒が夥しくずらりと並んでゐた。
「やあ、いけるいける! それでこそおいらの気に入るわい!」チェレ※[#濁点付き片仮名ヰ、1−7−83]ークは、未来の花聟が火酒をなみなみとついだ三合の余もはいる大コップを顔の筋ひとつ動かさずに、ぐつと一息に呑みほしざま、それを粉微塵に叩きわつたのを、やや酩酊してどろんとした眼で眺めながら、言つた。「どうだい、パラースカ? えれい花聟を目つけてやつたぞ! ほうら、見ろやい、なんちふ見事な呑みつぷりだか!……」
やがて彼は娘をつれて、げらげら笑ひながら、よろめく足どりで自分の荷馬車の方へ戻つて行つたが、当の若者は、小間物を並べた店々――その中にはポルタワ県下でも名高い二つの市《まち》、*ガデャーチやミルゴロドから来た商人も混つてゐたが、――それを軒並にひやかしながら、聟引出物として舅や、そのほか然るべき人々に贈るために、洒落れた銅金具つきの、木製のパイプだの、赤い縁に沿うて花模様をおいた手巾《ハンカチ》だの、さては帽子だのを、丹念に探してまはつた。
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ガデャーチ ポルタワ県下の同名
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