ゴロプペンコの忰を憶えてをつて貰へねえやうぢやあ!」
「そんなら、お前《めえ》は、あのオフリームの息子けえ?」
「でなくつて誰だといひなさるだね? 悪魔ででもなきやあ、その当人にきまつてらあな。」
そこで、ふたりは帽子をかなぐりすてて、接吻をしはじめたが、われらのゴロプペンコの忰は早速その場でこの新らしい友を攻め落さうと決心した。
「ところで、ソローピイのお父《とつ》つあん、そうらね、このとほり、おいらとお前さんの娘さんとあ、お互ひに好いた同士になつて、もう一生涯、離れようにも離れられねえ仲になつちやつたんだがね。」
「そいぢやあ、何かい、パラースカ、」と、笑ひながら娘の方へ向きなほつて、チェレ※[#濁点付き片仮名ヰ、1−7−83]ークが言つた。「ほんとに、もう何かい、その、なんだ……よく言ふ、ひとつ草を喰《は》まうつちふやつか! どうぢや? 手を拍つことにするだか? うん、よかつぺえ、それぢやあ、ほやほやの花聟どん、お祝ひに一杯やらかすことにすべいか!」
そこで三人は打ちそろつて、名の通つた市場の料理店へ入つて行つた――それは猶太女の出してゐる天幕店で、そこにはいろんな形の罎に入
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