こんだ貴顕紳士がざらに眼につくので、いつたいどの人に帽子を脱るべきか、頓と彼には分らなかつた。※[#始め二重括弧、1−2−54]おお神様! この市《まち》には一体どれだけ旦那衆がゐることだらう!※[#終わり二重括弧、1−2−55]そんな風に鍛冶屋は考へた。※[#始め二重括弧、1−2−54]おほかた毛皮外套《シューパ》を著て街を歩いてゐる人は、どれもこれも、みんな陪審官に違ひない! 又、ああいふ硝子窓のついた素晴らしい馬車を駆つて行く人々は市長でなければ、てつきり警察部長か、それとも、もつともつと身分の高い衆に違ひない。※[#終わり二重括弧、1−2−55]彼のかうした思索の絲は不意に、悪魔の質問に依つて断ち切られた。『女帝の御殿へまつすぐに参内するのでございますか?』※[#始め二重括弧、1−2−54]いや、それはちよつとおつかない※[#終わり二重括弧、1−2−55]と、鍛冶屋は考へた。※[#始め二重括弧、1−2−54]何処か知らないが、こちらに、この秋ディカーニカを通つたザポロージェ人の一行が逗留してゐる筈だ。あれは*セーチから女帝へ捧呈する上奏文をもつて来た連中だ。ともあれ、あの連中に
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