自分の頸にかけてゐた絲杉の十字架をはづして悪魔の方へ差し出すと、悪魔はくしやみをしたり咳をしたりする――それが面白くて堪らなかつた。彼がわざと頭を掻く振りをして手をあげても、悪魔は自分に向つて十字を切られるのではないかと思つて、一層はやく翔つた。)空はすつかり明るかつた。フハフハした銀いろの靄のたちこめた大気は透明で、何もかも手に取るやうに見ることが出来た。壺の中に坐つたまま、疾風のやうに傍を飛びすぎる魔法使の姿や、一と塊りになつて鬼ごつこをしてゐる星の群れや、また一方にうじやうじやと雲のやうに渦巻いてゐる精霊の一団や、月光の前で踊りながら、自分の同族の肩車に乗つて駈けすぎる鍛冶屋に向つて帽子をとる別の悪魔や、妖女《ウェーヂマ》がまさしく何処か用事のある処へ乗つて行つたらしい箒がひとり翔んで後へ引つ返しつつあるのまで、はつきりと認めることが出来た。そのほか様々の有象無象に彼等は出喰はした。どれもこれも鍛冶屋を見ると、一瞬間、その場に立ちどまつて、まじまじと彼の顔を眺めるが、やがて通りすぎてしまふと、まためいめいの運動をつづけた。鍛冶屋はずんずんと翔んで行つた。と、不意に彼の眼の前に、い
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