ことだから、きつと袋の中には鬼でも入つてゐると思つて、逃げ出してしまふだらう、さうなつたが最後この往来のまんなかに、てつきり朝までは放つて置かれなきやなるまい、さう思つたので、一切口をきかぬことに肚を決めた。
 その間に娘どもは仲よく手をつなぎあつて、軋みを立てる雪の上を、まるで旋風のやうに橇を引いて疾走して行つた。娘たちの多くは、ふざけて橇に乗つかつたりしたが、中には村長の上へのしかかつたりする者もあつた。けれど村長は何事もじつと我慢するより他はないと諦らめた。
 やがて家へつくと、入口の扉をいつぱいに開けはなして、笑ひさざめきながら袋を中へ引きずり込んだ。
「さあ、この中に何が入つてるか見てやりませうよ。」さう叫んで、一同はいきなり袋の口を解きにかかつた。
 この時、袋の中にすくんでゐる間ぢゆう、村長が我慢に我慢をしてゐたくしやみの発作がいよいよ激しくなつて、たうとう彼は、思ひきり大きくくしやみをして咳き込んでしまつた。
「あら、この中には誰か人が入つてるのよ!」さう叫びざま、娘たちは驚いて、戸の外へ逃げ出してしまつた。
「どうしたつてんだね、お前さん方は、狂人《きちがひ》のやうに
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