駈け出したりして?」と、その時、入口へ入つて来たチューブが声をかけた。
「まあ、お父《とつ》つあん!」と、オクサーナが言つた。「あの袋の中に誰かしら入つてゐるのよ!」
「袋の中に? いつたい何処からこんな袋を持つて来たんだ?」
「鍛冶屋が道の真中に棄てて行つたのよ。」と、みんなが異口同音に答へた。
※[#始め二重括弧、1−2−54]ふうむ、さうか。言はねえこつちやないて……※[#終わり二重括弧、1−2−55]と、チューブは肚の中で頷いて、「何をビクビクしてるだ。ひとつ中を調べてみようでねえか――さあさあ袋ん中の御仁へ――どうか名前と父称でお呼び申さないことを悪く思はんで下さいよ――さあ、袋から出ておくんなさい!」
村長が外へ這ひだした。
「わあつ!」と娘たちは金切声をあげた。
※[#始め二重括弧、1−2−54]村長までがこんな中へ入つてやあがつたのだな※[#終わり二重括弧、1−2−55]と、いささか呆れ顔で、相手を頭の天辺から足の爪先まで、じろじろと眺めながら、チューブは口の中で呟やいた。「これあどうも!……うへつ!……」それ以上、彼は何も言ふことが出来なかつた。
村長の方も負けず
前へ
次へ
全120ページ中84ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
平井 肇 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング