蒸桶《さかをけ》が往来をよたよた蠢めいてゐるといつた恰好だつた。恐らく、こんなことから彼を太鼓腹《プザートゥイ》と呼び始めたものだらう。この男が村へ来てまだ幾週間もたたないうちに、村民は彼が魔法使であることを知つた。そこで誰か病気をするやうなことがあると、さつそくパツュークが呼び迎へられた。ところがパツュークがほんの二言三言、呪文を唱へただけで、病気は立ちどころに、拭ひ取つたやうに、けろりと癒つてしまふのだつた。すきつ腹《ぱら》の貴族があわてて魚の骨を咽喉に立てたりしたやうな場合には、パツュークが実に巧みに拳で背中を叩いて、その貴族の咽喉には何の故障も残さずに骨をば行くべき処へすうと通してしまつた。最近は彼をあちらこちらで見かけることが稀れになつた。それは多分、ものぐさからでもあつたらうが、或はまた、我が家の戸口を擦り抜けるのが年とともに困難になつて来たからでもあらう。この頃では、何か彼に用のある時は、村人の方から彼の家へ出かけて行かなければならなかつた。
鍛冶屋が内心おどおどしながら、戸を開《あ》けて見ると、パツュークは、団子汁《ガルーシュキ》をいれた鉢を桶の上にのせて、それに向つ
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