祷は終り、朝祷についで、弥撒も終つた……。いつたい鍛冶屋はどこへ消え失せてしまつたのだらう?
* * *
その夜の残りの時間を、鍛冶屋を肩車にのせた悪魔が戻りの途を駈けに駈けたので、瞬く隙にワクーラは自分の家の傍へ運ばれてゐた。ちやうどその時、鶏が鳴いた。
「こら、何処へ行きをる?」と、鍛冶屋は、逃げ出さうとする悪魔の尻尾を、むんずと掴んで呶鳴りつけた。「待て、待て、まだ用は済まないぞ。おれはまだ、貴様にお礼をしなかつたからなあ。」
彼はさういつて、棒つきれを握りざま、悪魔を三度打ちすゑた。すると哀れな悪魔は、まるでたつた今、役人に一と泡ふかされた百姓よろしくの恰好で、一目散に逃げ出した。とどのつまり他人《ひと》を誑らかしたり、罪に誘《ひ》き入れたり、愚弄したりする、あの人間の敵が、あべこべに、まんまと翻弄されたわけである。
それから、ワクーラは入口の土間へ入るなり、乾草のなかへ潜《もぐ》りこんで、午前ちゆう、ぐつすり寐込んでしまつた。やつと眼がさめた時には、もう疾《とつ》くに太陽が高く昇つてゐたので、彼はびつくりした。※[#始め二
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