て、その顔にはただ激しい焦慮の色が漂ひ、眼には涙の露が顫いてゐた。その原因《いはれ》を判断することの出来なかつた娘たちは、オクサーナの悩みの種が鍛冶屋のことにあらうなどとは、夢想だにしなかつた。とはいへ、独りオクサーナだけが鍛冶屋のことに心を奪はれてゐたのではなかつた。村人のすべてに、何かしら物足らぬやうな、お祭りがお祭りらしくないやうな心持がされるのであつた。搗てて加へて、補祭は、あの袋の中の旅ですつかり声を嗄らしてしまつたので、辛くも聞きとれるやうな嗄がれ声を振り絞つてゐる有様であつた。なるほど新来の歌手は巧みに低音部《バス》を勤めたには勤めたが、もしここに鍛冶屋がゐたものなら、とてもその足もとへも寄れることではなかつた。鍛冶屋といへばいつも、※[#始め二重括弧、1−2−54]我等の父※[#終わり二重括弧、1−2−55]や、※[#始め二重括弧、1−2−54]天津使《あまつつかひ》※[#終わり二重括弧、1−2−55]が始まると同時に、頌歌席へあがつて、ポルタワで唄はれるのと同じ調べでうたひ出すのが常であつた。その上、寺の世話方の役を引き受けるのは専ら彼にきまつてゐたものだ。はやくも朝
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