よう? あの鍛冶屋みたいな素晴らしい若者は、どうしてどうして、他に見つかるものぢやない。彼こそ彼女を飽くまで愛してゐたのだ! 誰よりも辛抱づよく、彼女の気紛れを我慢して来たのだ……。この美女は夜つぴて上掛の下で輾転反側して、一睡もすることが出来なかつた。時には、夜の闇のために彼女自身にさへ見えぬ蠱惑的な裸形をば、うんとふんぞらせながら、殆んど口に出して自分で自分を罵つた。さうかと思ふと、強いて平静を装ほつて、断然なにも考へまいと決心した。が、やはり思ひは同じところへおちてゆくのであつた。かうして、彼女の全心全霊は火のやうに炎えあがり、夜の明ける頃には、夢中になつて鍛冶屋を恋ひ焦れてゐた。
ワクーラの運命に関して、チューブは何ら悲喜の色を表はさなかつた。彼の思ひはただ一つのことに占められてゐた――彼は何としてもソローハの不実を忘れることが出来ず、夢うつつの中ですら彼女を罵ることを止めなかつた。
やがて朝になつた。寺院の堂内は、まだ夜明け前から参詣の群衆で一杯だつた。白い被布《かつぎ》をかぶり、白い羅紗の長上衣を著た年寄りの女たちは、堂の入口ぎはで信心ぶかく十字を切つた。その前には、草
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