め寄りながら、梵妻が喚いた。「お前だね、この妖女《ウェーヂマ》め、あのひとに霧を吹つかけて、穢《きた》ない毒を呑ませて、あのひとを銜へこみくさつたのは!」
「どきあがれ、この夜叉め!」と、織匠《はたや》の女房は後退りをした。
「なにをつ! この忌々しい妖女《ウェーヂマ》めが、お前なんざあ、我が子の顔も見ずにくたばりくさるがええだ! 碌でなしめ! ちつ!」さういふと、梵妻は織匠《はたや》の女房の顔のまんなかへ唾を吐きかけた。
 織匠《はたや》の女房も負けず劣らず仕返しをしようと思つて、ぺつと唾を吐いたが、それは目指す相手にはかからないで、この啀み合ひをもつとよく聴かうとして、顔をさし寄せてゐた村長の髭面にまんまと、ひつかかつたものだ。
「ええ穢《きた》ならしい、この婆あめが!」さう呶鳴つて村長は、着物の裾で顔を拭きながら、鞭を振りあげた。その劔幕に驚ろいた一同は、悪態をつきつき、ぱつと四方へ散つた。「ええ、穢ない!」と、顔を拭きながら村長が繰返した。※[#始め二重括弧、1−2−54]それぢやあ、鍛冶屋は身投げをしてしまつたか! ほんとになあ! まつたく上手な絵描きぢやつたが! 丈夫な小刀
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