ては困りますよ! つまり、わたし自身の鼻のことで、それがね、どこかへ失踪して、わからなくなってしまったのです。畜生め、人を馬鹿にしやがって!」
「だが、どうして失踪したとおっしゃるんで? どうもよく会得《のみこ》めませんが。」
「どうしてだか、わたしにもお話のしようがありませんがね、しかし彼奴が今、市《まち》じゅうを乗り廻して、五等官と名乗っていることは事実です。だから、そやつを取り押えた人が一刻も早くわたしのところへしょびいて来てくれるように、ひとつ広告を出していただきたいとお願いしてるんですよ。まあ、ほんとうに、お察し下さい、こんな、躯《からだ》のうちでも一番に目立つところを無くしては立つ瀬がないじゃありませんか! これは、足の小指か何かとは訳が違いますよ。そんなものなら、たとえ無くても、靴さえはいておれば、誰にもわかりっこありませんからね。わたしは木曜日にはいつも、五等官夫人チェフタリョワのところへ行きますし、佐官夫人ペラゲヤ・グリゴーリエヴナ・ポドトチナだの、その娘さんで、とても綺麗な令嬢だのも、やはり非常に懇意な知り合いなんですからねえ。お察し下さい。いったいこのさきどうして
前へ
次へ
全58ページ中26ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
ゴーゴリ ニコライ の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング