鼻
ニコライ・ゴーゴリ
平井肇訳
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)理髪師《とこや》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)相手の頬と下|歯齦《はぐき》にかけただけで
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#ここから1字下げ]
*:注釈記号
(底本では、直後の文字の右横に、ルビのように付く)
(例)十*プードもある
−−
一
三月の二十五日にペテルブルグで奇妙きてれつな事件がもちあがった。ウォズネセンスキイ通りに住んでいる理髪師《とこや》のイワン・ヤーコウレヴィッチ(というだけでその苗字は不明で、看板にも、片頬に石鹸の泡を塗りつけた紳士の顔と、【鬱血《こり》もとります】という文句が記してあるだけで、それ以外には何も書いてない)、その理髪師《とこや》のイワン・ヤーコウレヴィッチがかなり早く眼をさますと、焼きたてのパンの匂いがプーンと鼻に来た。寝台の上でちょっと半身をもたげると、相当年配の婦人《おんな》で、コーヒーの大好きな自分の女房が、いま焼けたばかりのパンを竈《かまど》から取り出しているのが眼に
次へ
全58ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
ゴーゴリ ニコライ の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング