て訊ねた。
「わたしのお願いは……」と、コワリョーフが言った。「詐欺ともペテンともつかぬものに引掛りましてね――それが今もって、どうしてもわからないのです。で、その悪党をわたしのところへ引っぱって来てくれた人には、相当の謝礼をすると掲載していただければよろしいんです。」
「ところで、お名前は何とおっしゃいますか?」
「いや、名前など訊いて何になさるのです? そいつは申しあげられませんよ。何しろ知り合いがたくさんありますからね。例えば五等官夫人のチェフタリョワだの、佐官夫人のペラゲヤ・グリゴーリエヴナ・ポドトチナだのといったあんばいに……。それで、もしもそんな人たちに知れようものなら、それこそ大変です! ただ、八等官とか、いやそれより、少佐級の人物とでもしておいて下さればいいでしょう。」
「で、その逃亡者というのは、お宅の下男ですね?」
「下男などじゃありませんよ! そんなのなら、別に大したことではありませんがね! 失踪したのは……鼻なんで……」
「へえ! それはまた珍しい名前ですな! で、その鼻氏とやらは、よほどの大金を持ち逃げしたんですか?」
「いや、鼻というのは、つまり……誤解され
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