ながら、少佐は肩をすぼめた……)失礼ですけれど、もしもこれを義務と名誉の法則に照らして考えますなら……あなた御自身よくおわかりのことでございましょうが……」
「いや、さっぱりわかりませんねえ。」と、鼻が答えた。「もっとよくわかるように説明して下さい。」
「ね、貴下、」コワリョーフは昂然として言った。「わたくしには、あなたのお言葉をどう解釈していいかわからないのです……。この際、問題は明々白々だと思いますがねえ……それとも、お厭なんで……。だって、あなたは――このわたくしの鼻ではありませんか!」
 鼻はじっと少佐を眺めたが、その眉がやや気色ばんだ。
「何かのお間違いでしょう。僕はもとより僕自身です。のみならず、あなたとの間に何ら密接な関係のあるべきいわれがありません。お召しになっている、その略服のボタンから拝察すれば、大審院か、あるいは、少なくとも司法機関にお勤めのはずですが、僕は文部関係のものですからね。」こう言うなり、鼻はくるりと向きを変えて、再び祈祷にうつった。
 コワリョーフはすっかりまごついて、はたと言句につまってしまった。【どうしてくれよう?】彼はちょっと考えた。その時、一方
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