に※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]される紡錘《つむ》そつくりで、旋風のやうな迅さでバンドゥーラの絃《いと》を掻き鳴らすかと思ふと、直ぐさまその手を腰につがへて、しやがみ踊りに移る、歌をうたふ――心もそぞろに浮き立つばかりぢや……ところが今ではもう時勢が変つて、さうしたザポロージェ人の姿も滅多には見られなくなつたが、それはさて、偶然に落ち合つた二人は、一と言二た言ことばを交はしただけで、もう十年の知己のやうに親しくなつてしまつたのぢや。次ぎつぎと矢鱈に話がはずんだものだから、祖父はすつかり自分の旅の用向きも忘れてしまつてな、二人は早速、大精進期前の婚礼そこのけの、飲めや唄への大酒宴をおつぱじめたものぢや。だが、たうとう終ひには、壺を叩きわつたり、人だかりの中へ銭《ぜに》をばら撒いたりすることにも、退屈をするのは当然で、それに定期市《ヤールマルカ》がいつまで立つてゐるものでもなし。そこで、この新らしい友達同士はさきざき別れ別れになることを惜んで、道中を共にすることにしたのぢや。彼等が相携へて野中の道にさしかかつたのは、もう遠に夕暮ちかい頃だつた。陽《ひ》は沈んで、その代り空のとこ
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