》でござれ、乃至はリトワニヤ人でござれ、どれもこれも世界を股にかけて渡り歩いたものぢや! そればかりか、時には自国の者が徒党を組んで同胞から掠奪を擅《ほしいまま》にすることさへあつたのぢや。いや、どんなこともあつた時代ぢやからな。
さてその頃のこと、この村へ時々ひとりの男、といふよりは寧ろ人間の形に化けた悪魔が、姿を現はした。そいつはいつたい何処から、何をしにやつて来るのか、だれ一人として知る者がなかつた。遊興に耽つて、酒に酔ひしれてゐるかと思ふと、まるで水の底へでも潜つたやうに、たちまち姿を掻き消してしまつて、なんの音沙汰もなくなるのぢや。さうかと思ふと、まただしぬけに天からでも降つたやうに、今でこそ跡形もないが、ディカーニカとはつい目と鼻のあひだにあつたその村の往還をすたすたと足ばやに歩いてゐるといふ始末なのぢや。そこでまたしても逢ふほどの哥薩克たちを残らず寄せ集めて、飲めや唄への乱痴気さわぎをおつぱじめて、銭をばら撒く、火酒《ウォツカ》は浴び放題……美しい娘つ子には、そつとすり寄るやうにして、リボンだの耳環だの頸飾だのを、もてあますほど呉れてやる! 実は、美しい娘つ子たちも、さ
前へ
次へ
全46ページ中10ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
ゴーゴリ ニコライ の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング