会得ができず、その癖、何かといへば人を嘲るやうに白い歯を剥き出して笑ふだけが能といつた、まことにお悧巧な方々を見受けるもので、さういふ手合には何を話しても、ただもう、にやにや笑つてゐるばかりでな。実に、時世時勢《ときよじせい》とでもいふのか、何ひとつ真《ま》に受けるといふことが無くなつた! 近い話が――これあもう、天地神明に誓つての話ぢやが――あなた方にしてからが、ほんたうにはなさるまいけれど、ある時、ちよつと*妖女《ウェーヂマ》の話をしたところ、どうぢやらう? ひどい悪党もあつたもので、妖女《ウェーヂマ》を信じをらぬのぢや! お蔭でこの年になるまでには、こちとらが嗅煙草を嗅ぐよりもたやすく懺悔僧にむかつて嘘八百をならべ立てるやうな不心得な外道にもよく出会つたものぢやが、そのやうな輩《やから》でも、妖女《ウェーヂマ》の話が出れば、鶴亀々々と十字を切つたものぢや。したが、そんな手合には勝手にさせておくがええ……口にするのも穢らはしい……。何もかれこれ言ふがものはないぢやて。
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妖女《ウェーヂマ》 悪魔に身をまかせて神通力を得た女、人間に害悪を加へ
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