のをわたしの物語だと言ひましたんで?」
「論より証拠ぢやありませんか、ここにちやんと刷りこんでありまさあね、※[#始め二重括弧、1−2−54]役僧|某《なにそれ》これを物語る※[#終わり二重括弧、1−2−55]と。」
「ちえつ、そんなことを刷りこみをつた奴の面に唾でも引つかけておやりなされ! 大露西亜人《モスカーリ》の畜生めが、嘘八百で固めをる! 誰がそんな風に話すもんですかい? まるで箍のゆるんだ桶みたいな、ぼんくら頭の野郎ぢやて! まあお聴きなされ、それぢやあ、改めて一つその話をいたしませう。」
 われわれが卓子へすりよると、彼は次ぎのやうに語りはじめた。
 わしの祖父といへば、(どうか、あのひとに天国の恵みがありまするやうに! またあの世では小麦粉の白麺麭《ブハニェーツ》と、蜂蜜をつけた罌粟餡麺麭《マーコフニク》ばかり鱈腹食べてをりまするやうに!)いや実に話上手な人ぢやつた。よく祖父が話をはじめると、まる一日ぢゆう席を立たずに聴き入つても飽きなかつたものぢや。とてもとても、今時の道化どもが口から出まかせの嘘八百を、ものの三日も飯を食はなかつたやうな舌まはりでやりだしたが最後、さつ
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