げ]
鶏の脚で立つた小舎 露西亜の昔噺に出て来る鬼婆の棲家は、森の中に鶏の脚で立つてをることになつてゐる。
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「おぬしは、あの娘を手に入れるために、どんな約束をしたのぢや?……」さう呶鳴るバサウリュークの声が、まるで鉄砲だまのやうにうしろから彼の五体に突きとほつた。妖女《ウェーヂマ》が片足あげて、とんと地面を踏んだ。すると、青い焔が地のなかからたちのぼつて、地下全体がかつと明るくなり、まるで水晶ででも出来てゐるやうに、大地の底にあるものが何もかも、手に取るやうに見え出した。彼等の立つてゐる地面の真下には、櫃や鍋にいれた金貨だの宝石だのが、うづたかく埋蔵されてゐるのだつた。ペトゥローの両の眼は燃えるやうに輝やいて……理智の鏡も曇らされた……。まるで正気を失つたもののやうに彼は短刀を掴んだ。無辜の血汐が彼の両眼にはねかかつた……。悪魔の高笑ひが四方からどつとあがつた。醜悪きはまる化生のものが彼の眼前を群れをなして駈けまはつた。妖女《ウェーヂマ》は首を刎ねられた屍を両手にかかへこんで、狼のやうにその血をすするのだつた……。ペトゥローの頭のなかでは何もかもがぐるぐると※
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