ら、そいつの※[#「口+云」、第3水準1−14−87]ひつけどほりにするのぢやぞ、さもないと、取りかへしのつかぬことになるのぢや!』さう言つて彼が、節くれだつた木の杖で荊棘《いばら》のしげみを押し分けると、二人の面前には、昔噺にあるとほりの*鶏の脚で立つた小舎が現はれた。バサウリュークが拳をあげてその戸を叩くと、壁がゆらゆらと揺めいた。そして大きな黒い犬が一匹飛びだしたかと思ふと、ぎやつと叫びざま、猫の形に変つて、二人の方へまともに躍りかかつて来た。『おいおい、腹を立てなさんなよ、鬼婆《ばあ》さん!』さう言つてからバサウリュークは、堅気な人間にはとても聞きずてにすることの出来ないやうな、いかがはしい言葉をつけ足した。すると、今度は猫ではなくて、まるで焼林檎のやうに皺くちやな顔をして、全身が弓のやうに曲つた老婆の姿にかはつた。その鼻と頤とが、ちやうどあの胡桃を割る鋏子《やつとこ》のやうな恰好に向ひあつてゐた。※[#始め二重括弧、1−2−54]大変な別嬪ぢやわい!※[#終わり二重括弧、1−2−55]さう思ひながら、ペトゥローは背筋にぞうつと寒けを覚えた。妖女《ウェーヂマ》は彼の手からくだん
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