しに来やがつたんだ? さあ出て行け、このどん百姓めが、とつとと出てうせやあがれ!』つてんで……実際の話だが……。いや、何も言ふがものはない! まつたく、このわしにとつては、広い世間さまへ顔出しをするよりは、年に二度*ミルゴロドへ出むく方がよつぽど安易《らく》なんで、ところが、そのミルゴロドの地方裁判所の監督書記にも、あすこの偉い和尚にも、もう五年このかた頓と会はないやうな次第でな。――したが、いつたん顔を出したからには、泣いても笑つても一通りの弁疏《いひわけ》はしておかずばなるまいて。
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ミルゴロド 小露西亜ポルタワ県下の小都会。ドニェープルの支流ホロール河の沿岸に位し、『ディカーニカ近郷夜話』に次いでゴーゴリが書いた著作集『ミルゴロド』は、この地名を採つて標題としたのである。
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さて、親愛なる読者諸子よ、――いや飛んでもないことを申して御免なされ、(若しかしたら、こんな蜜蜂飼風情があなた方にむかつて、まるで自分の仲人《なかうど》か教父にでも話しかけるやうな、不躾けな物の言ひ方をするのをさぞかし御立腹になるかもしれませ
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