。トーキー時代以前に人気のあった役者たちを世界中から格安な給料でかりあつめました。チャールス・ファーレル、ウイリアム・パウエル、ジャック・クーガン、ゲイリイ・クウパア、ドロレス・デルリオ、ルイス・ブルックス、フェイ・レイその他日本で云えば山内光とか竜田静枝とか云うようなトーキーに幸いされなかった連中のあつまりで、それぞれ彼等の故郷の風景映画でつくりました。これは、非常に静かな映画ですから或いは市場に於ても珍奇なものとして相当歓ばれるかも知れません。第三回は今撮影中ですが、ジャン・ジャック・ベルナアルの「旅の誘い」を僕が書きなおしたものです。ヴオジュの山麓と巴里の景色を悉くセットで作りました。役者はポール・ムウネ・ジュニアですが、この映画は全部フルシインとロングばかりで、アップはおろかバストも一切用いません。またフェイドとかオウヴァ・ラップとかそんな技巧は一切用いないのです。尤も、僕のところのカメラは甚だそうした高等技術には不適当なやつで、高密式の百写しと云う機械です。何故と云って、僕の考えでは最も効果的に活動写真の本質をしめすのは、なるべく上等でないカメラに限るようです。……おや、もう
前へ 次へ
全8ページ中6ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
渡辺 温 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング