た処で、甘く調子が取れて行く。此所に尤も味が有る処で、此処を一つ考へなければならないのだ。甚だ、君等には要領を得にくいかも知らんが、大賢は市で騒ぐと云ふ事もある。瓢箪の様な、ノラクラした中に、チヤンと腹のククリが有る。あの、括りがえらい処なのだ。動中の静、静中の動だか、よくは知らないが、人の顔立でもさうだ。目付が勝れていゝとか、耳がすぐれてよいとか、鼻がスラリとして居るとか、さう云ふ事は無いけれど、ボンヤリした顔全体その物に於て、立派な顔とか、美くしい顔とか、認める事が出来る。我自治は、半自治なりさ。此に於て、消したり、消さなんだり、門衛の頭を殴つたり、殴らなんだりと云ふ、面白いだらう。ヤイドーダ」と、矢鱈に舌なめずりして居る。云ふ中に又、ドヤ/\と這入つて来た四五人の生徒に取まかれて、酔つた人も、酔はない人も、遠くの方に行つて仕舞つた。こんな事は、毎晩の様にあるよ。えらい饒舌つて、少々くたびれた様だが、誰か又、話しをする奴はないかな」とこれで第二の先生の話しも終つたのであつた。
 が、皆思ひ合した様に黙つて居て、何とも云ふ奴はない。こんな話しを聞いたり、聞かされたりして居て、此の暗い
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