出来ない。如何となればだ。追々むつかしくなるよ。如何となれば、前にも云つた通り、自治とは、無規則なりだから、人間の社会に於て、規則も何もなくなる。換言すれば、全くの平和的社会、理想的社会、トルストイが云ふ様な、無規則な社会と云ふものが、眼の前に現はれる時があるだらうかと云ふに、之は決して無いのだ。人間が二人以上、生存して居る間には、決してかゝる社会は出て来ない。即、真正の自治と云ふものは、人間消滅後に於て、実現し得可きものであるのだ。処で、其次が半自治と云ふ奴だ。吾々の自治寮は、即ちこの半自治の状態に有るのだ。半自治とは、換言すれば、規則が有つたり無かつたりと云ふ状態なのだ。我が自治寮の自治と云ふ奴は、今云ふ様な朦朧体である。ボンヤリした物である、以て行はれ易き所以なりだ。併し、此のボンヤリ体、行燈体と云ふのは、尤も面白い奴で、自治はどうしても、此の行燈体でやらなくては成功しない。馬鹿に大きな火をおこすと餅が焦げてしまふ。ヌル/\と焼く処で甘く出来るのだ。あつちに寄つたり、こつちに寄つたりで、舟は航海が出来る。天気になつたり、雨が降つたり、照つたり降つたり、降つたり照つたり、ボンヤリし
前へ 次へ
全44ページ中41ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
尾崎 放哉 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング