のが、生徒の奴さ、イキナリ「ヤイ門衛、俺の名を消せ、ケケケ消さぬか、野郎!」、門衛の、其のテカ/\した頭を、ポカリと御見舞申さうとした時、又、やつて来たのが一人の生徒さ。これは酒に酔つて居ないと見えて「ヤイ、待て/\、何だ」と、酔つて居た奴を抑へると、「放せ、放せつたら放せ、門衛の奴、自治の何たるかを解せない、見ろ、俺の名を消さんとぬかすのだ。かるが故に、一本ポカリと」、「まー待て、そりや君が悪いよ、大人しく帰つて寝ろ」、「何、俺が悪い、貴様も又、自治を解せないと見える。俺の言ふ処を暫く聞けだ。夫れだね、夫れ自治なるものは、一年や一年半、寮に居たとて、解る物ではない。少なくとも三年、多くは、四年居らんければ解らない。之を換言すれば、自治は無規則なり、規則無き也だ。而し、只之丈では、君見たいな一年級は、誤解を来すだらう。無規則とは、要するに之、一種の規則であるのだ。『規則が無い』規則と云ふ規則なのだ。抑、自治には三階級がある。第一は真正の自治だ。第二は半自治だ。第三は似而非自治と云ふのだ。勿論、自治の目的は、この真正の自治となる処にあるのだけれ共、到底、吾々は真正の自治と云ふ物を見る事は
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