やるのは古い生徒ばかりだが、すると小使は、法螺貝の中から追ひ出されたヤドカリと云ふ見えで、傍にシヨンボリと、斑になつた小倉服を衣て、寒さうに立つて見てゐる。コツチは一向頓着なしで以て、笑つたり、うなつたり、小使なる者の存在は、もとより眼中に無いので、時によると、国から可愛い息子に送つて来た餅だの、魚だのを持つて来て、鉄串で焼いて喰ふ。皆、狼の様な連中だもの、御溜りコボシが有るものか、あはれ息子に、あの可愛い息子に喰はせようと、はる/″\送つて来た餅は、支那の様に、見る間に蚕養せられてしまつて、肝心の息子様は、ヤツト一つ、呑みこんだか呑み込まんかと云ふ有様、もし、ソロ/\噛んで居ようものなら、それこそ、半分も此の息子は喰はなかつたであらう。俺はつら/\考へたね、決して江戸に出て居る息子なぞに、餅を送つてやつたりする者ではないと。
 或日の事で有つたが、朝から、ドン/\と云ふ大雪、小使部屋は従つて素敵な人数、小使は壁の方に押し付けられて、小さくなつて居る。も少し押したら、小使は大方、壁の中に塗り込まれてしまふだらうと、心配した程だつた。従つて、話も随分始まる。一番火鉢の傍にかまへて居た、化
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