云へば、少々御目出度い方かも知らんが、天真だと思ふ。頭を分けて、たのしんで居る処は無邪気ではないか。以て愛す可しだ。反対で、蛮カラーと云ふ奴は、表裏は天真ラシイかも知れないが、僕はどーも陰険だと思ふな。かう云ふと君は蛮カラ也、故に陰険也と来るかもしれんが、君丈は例外だ。之は証明するのは苦しいが、慥に、一筋繩では行かぬ人間だ。えらい奴も有らうが、悪党もきつと蛮カラーに有るよ。だから僕は蛮カラー親しむ可からず、ハイカラー愛す可しと云ふのだ。どうだい」、水でもほしいと云ふ顔付だが、可愛さうに、此の大議論に誰も耳をかたむける者がなかつた。
かれこれする中に、四時になつた。すると「チビ」は「僕はもー行かう、失敬」と、又、窓から出て行つた。まるで猫だ。「ヤイ、余り呑むな」、大頭が首を出して笑つた。室の中は、今の「チビ」が穿いて来た靴の泥で、すこむる汚なくなつた。「汚いなー、どうも通学生は個人主義でいかん。自分が居らんからつて、まるでメチヤだ。通学生位、癪にさはる奴は無いよ」と、コボしてゐるのは大頭だ。しかし実を云ふと、俺の見てる中に、此の大頭先生も窓から出た事があつた。
人間と云ふ者は、得手勝
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