をぬかすと思つたが、此奴、一番眠気覚しにしてやらうと思つたから、「そーかね、君等は随分古顔だから、中々面白い事が有つたでせうね」と云ふと、遂々やり出した。「そりや有るさ。君等に話した処で、到底、まだ解らんだらうが、未だ、これから、生末の長い君等だから、随分、後学の為にもなるであらう、忘れない様に、聞いて置いたらよからうさ。俺は、此処に来てから四年になるのだ。始めて来た時は、東寮と云ふ処に居たのだ。君等は未だ見ないかも知れんが、此寮なぞよりはズツト高い三階だ。三階は三階でも、(三界に身の置き処なし三世相)と云ふ奴で、監獄と思へば余り間違ひはないよ。大きい丈に、生徒の数も二百計りは居る様だ。数が多いだけに又、変つた事も大有りだ。さうさね、随分話しになりさうな事はあるが、ヲーさうだ、君等は未だ、人間の死ぬる、勿論、自殺する処を見た事はあるまい。――なに五六遍見たつて。それはえらい。なんだ例の鐘や太鼓の調子でやるのだらうて、何の事だいそれは。芝居でだつて、馬鹿にするない、そんなケチ臭いのではないよ、赤毛布を被つてソロ/\匍ひ込む、そんなではないのだ。さすがは、高陵の健男子とか云ふ丈に、立派な物
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