。しかも皆、同じ様に怪我をして居るから妙だ。「イヨー」と挨拶すると、向ふは「ヨー」と気のない返事をする。何の事やら解らない。まづ、ヤツと腰が落付いた様だから、つら/\見渡すと、天窓からさし込んで来る、ボンヤリした光線の中に、俺等の仲間が、今やつて来たのも加へて、総計十二居る様だ。そろひも揃つた仏頂顔でスマシテ居る。スルト、俺の向ふ側に坐つて居た奴が、「貴様等もトー/\来たね」と云つた。其声が、馬鹿に優しかつたので、俺も元気付いて、定めて驚くだらうと、得意になつて、昨夜の一部始終を話したのだ。併し、此奴のみならず、側に坐つて居る連中も、スマした物で、丁度、生徒の講義して居るのを、先生が聞いて居る様な顔付で、解り切つた事だ、と云はぬ計り。頗《すこぶ》る俺の癪にさはるのみならず、バツがわるいので、「君は何時此処へ来たのですか」と、少し大きな声できいてやつた。すると、「何時つて、今度で四度目さ」、どうだえらいだらうと云ふ鼻付、何がえらいのか俺には解らぬ。「フーン」と不得要領な返事をして居ると、中で「俺は三度目さ」と云つた奴がある。「俺は二度目だ」と云ふ声が続いて出た。五ツ六ツこんな事を云つた。
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