強靱なる銀の足鐶《あしわ》である。
死滅のほそい途《みち》に心を向ける これらバラツクのなかの人人は
おそろしい空想家である。
彼等は精彩ある巣をつくり、雛《ひな》をつくり、
海をわたつてとびゆく候鳥である。
ひろがる肉体
わたしのこゑはほら貝のやうにとほくひろがる。
わたしはじぶんの腹をおさへてどしどしとあるくと、
日光は緋のきれのやうにとびちり、
空気はあをい胎壁《たいへき》の息のやうに泡をわきたたせる。
山や河や丘や野や、すべてひとつのけものとなつてわたしにつきしたがふ。
わたしの足は土となつてひろがり
わたしのからだは香《にほひ》となつてひろがる。
いろいろの法規は屑肉《くづにく》のやうにわたしのゑさとなる。
かくして、わたしはだんまりのほら貝のうちにかくれる。
つんぼの月、めくらの月、
わたしはまだ滅しつくさなかつた。
躁忙
ひややかな火のほとりをとぶ虫のやうに
くるくるといらだち、をののき、おびえつつ、さわがしい私よ
野をかける仔牛のおどろき、
あかくもえあがる雲の真下に慟哭をつつんでかける毛なみのうつくしい仔牛のむれ。
鉤《はり》を産む風は輝く宝石の
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