藍色の蟇
大手拓次

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)寝間《ねま》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)二|疋《ひき》の犬

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「女+冒」、第4水準2−5−68]嫉《ばうしつ》
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  藍色の蟇

森の宝庫の寝間《ねま》に
藍色の蟇は黄色い息をはいて
陰湿の暗い暖炉のなかにひとつの絵模様をかく。
太陽の隠し子のやうにひよわの少年は
美しい葡萄のやうな眼をもつて、
行くよ、行くよ、いさましげに、
空想の猟人《かりうど》はやはらかいカンガルウの編靴《あみぐつ》に。


  陶器の鴉

陶器製のあをい鴉《からす》、
なめらかな母韻をつつんでおそひくるあをがらす、
うまれたままの暖かさでお前はよろよろする。
嘴《くちばし》の大きい、眼のおほきい、わるだくみのありさうな青鴉《あをがらす》、
この日和のしづかさを食べろ。


  しなびた船

海がある、
お前の手のひらの海がある。
苺《いちご》の実の汁を吸ひ
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