ながら、
わたしはよろける。
わたしはお前の手のなかへ捲きこまれる。
逼塞《ひつそく》した息はお腹《なか》の上へ墓標《はかじるし》をたてようとする。
灰色の謀叛よ、お前の魂を火皿《ほざら》の心《しん》にささげて、
清浄に、安らかに伝道のために死なうではないか。
黄金の闇
南がふいて
鳩の胸が光りにふるへ、
わたしの頭は醸された酒のやうに黴の花をはねのける。
赤い護謨《ごむ》のやうにおびえる唇が
力《ちから》なげに、けれど親しげに内輪な歩みぶりをほのめかす。
わたしは今、反省と悔悟の闇に
あまくこぼれおちる情趣を抱きしめる。
白い羽根蒲団の上に、
産み月の黄金《わうごん》の闇は
悩みをふくんでゐる。
槍の野辺
うす紅い昼の衣裳をきて、お前といふ異国の夢がしとやかにわたしの胸をめぐる。
執拗な陰気な顔をしてる愚かな乳母《うば》は
うつとりと見惚れて、くやしいけれど言葉も出ない。
古い香木のもえる煙のやうにたちのぼる
この紛乱《ふんらん》した人間の隠遁性と何物をも恐れない暴逆な復讐心とが、
温和な春の日の箱車《はこぐるま》のなかに狎《な》れ親しんで
ちやうど麝香猫と褐色の
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