Aためらひ勝ちの中《うち》に動きのある風情。
4、姿は、心なく望みに迷ひ何となく求《もと》めつつゆく二十一の女のうしろ姿。等々――以下略。
[#ここで字下げ終わり]

 言はば、闇をくぐる水音の声なきが如く、ほそけれど絶ゆるなく、燃えあがる情緒を籠めてゐる。
(けれど、どの香水も使用する季節により、その表情に変化が伴ふことを心得ておかなければならぬ。)
 このレエマンを使用する時あなたは、金の指環をしてはならぬ。何となれば、その指環の表情の硬さが、この香水の表情をそこなふから。ルビーのある指環はいけない。この紅い色の感じが、この香水の表情とそぐはないから。勿論、金側の腕時計などはいけない。大粒の真珠の一つ珠《たま》をつけたピンを身体の何処かに、あらはにしないで使用するのがふさはしい。それもキーツのセントアグネスイーブのなかにあるやうに、その銀色の真珠を肌につけて、あたためてゐれば尚更情趣が加はるかも知れない。腕時計をするなら、プラチナ側《がは》の余り光らない丸い7形か8形ぐらゐがよい。リボンの色は、淡声[#「声」に「ママ」の注記]色系統のものがよい。
 このレエマンは、朝の香水でもなく
前へ 次へ
全16ページ中8ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
大手 拓次 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング