ゆかない。根本的は、表情のしつかりした鑑別だ。
話はそれるが、日本の昔の香道などは進んだものだ。ああいふものは、復活させたい。あの全身的感覚を動[#「動」に「ママ」の注記]かして、心身共に澄みきる所に、申分ない東洋的味ひがある。
日本の香の表情は、香水とは全然ちがつたものである。香は、内にこもるもので、香水は外にひらくものである。一面からいへば、香は精神への呼びかけで、香水は肉体への呼びかけである。
二
香水をつけるのに、自己の体臭をかくすため、人に話しかけるため、自己の幻想をよぶためなどがあるが、その用途によつて、それぞれ選び方が違つてくる。また、人待つ部屋に、「薫衣香」などたいて主人《あるじ》の心を示すのと同様に、香水焚き(又は香水ランプ)などで香水の香気を部屋にみなぎらして人を歓び迎へる事もある。
それから、香水の香気と線と他の化粧品の香気との関係を考慮に置くことが必要だ。
その調和不調和によつて、香水の効果を増すことも減ずることもある。安全なのは、香水も化粧品も同じ香気で統一してゆくことだ。併《しか》し、感覚が鋭敏なら、異《ちが》つた香気のものも用ゐて巧に
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