やにめかすのねえ」
おきよに云はれて、故もなくおしげは赤くなるのを感じた、さうか知ら、めかしているか知らと彼女は、意地の悪いおきよが、いくら磨かうたつて、下地《したじ》がいけないんだから、と嘲つてゐるやうな気がした。
「無理ないわ、十七だもの」
ふつと、彼女は下唇を出して笑つた。
「私、男みたいだつて、いつも母ちやんに云はれてるのよ、もつと、いい加減に大人らしくしたらいいぢやないかつて――」
「さうよ、もう大人よ、あんた――」
あら、と云つておしげはまた真赤になつた。汗が出るほどで、そつくり冷くなつてゐる手拭ひを取りあげたりした。
「ねえ、しげちやん、――私、あんたの肩を持つわ、しつかりおやりよ」
どちらかと云へば昔風の長めの顔をかしげて云ふのであった、おしげは黙つてゐた、わけが判らなかつた。
「――義姉《ねえ》さんに遠慮することなんかありやしない、そのうち、兄さんと相談してあんたの身の立つやうにしたげるわ、きつと」
お待ち遠さまと、あつらへの品を持つて来たので、おしげは、はつと狼狽したま[#「ま」に傍点]の悪さを辛うじて隠し得た、それ、あちらとおきよはボーイに云つて、自分は
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