? といふやうなことを云ひ始めた。この前彼等に会つた時、
「近いうちに一辺タキノの小田原へ行つて見やうぢやないか。」といふ話があつたことを彼は不図思ひ出したので、
「ぢや今度行つたら聞いて見やう」と父に答へた。
「皆な主に何をしてゐる人なの?」
「新聞社とか婦人雑誌社とか中学の先生とか……」
「雑誌や先生は厭だが、新聞社はいゝな。」
「皆な相当に偉いらしいですよ。」
「東京の新聞社ぢや大したものだらう、尤も俺は日本の新聞社は何処も知らないが、――ヒラデルヒヤの学校にゐた時分の友達で、ベン・ウヰルソンといふ男が今でもニユーヨーク・ヘラルドの論説記者をしてゐる、つい此間も手紙を寄した、そら、お前が子供の時分にオルゴールを送つて呉れた人だよ。」
「さうさう、Twinkle Twinkle Little Star, How I wonder what you are といふ……さうさう、今でもあるかも知れませんよ。」彼は変に細かく叙情的な声をした。
「いつかベンに手紙を書いた時、俺の倅も今では大学を卒業して、新聞記者になつてゐると云つてやつたことがあつた。それはさうとお前はいつの間にか止めちや
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