だ。何をするのも厭になるといふやうな、無茶苦茶に気が鬱いで……ターミナル・ペツシミストとでも云ふのかね、柄でもないんだがね。」
「楽天的厭世家《オプテイミステイク、ペツシミスト》! そんなものがあるか知ら。」
「そんなものがあるものか!」
「止さう/\。そんな話は――」彼は、ふつと厭アな気がして、庭に眼を反向けた。
「貴様には友達はないのか。」暫くして父はそんなことを訊ねた。
「あるにはあるけれど……」彼は、さう云つたものゝ気が滅入つた。
「親類の連中なんて当にはならんよ。」
彼には父が、どうしてそんなことを云ふのか好く解らなかつた。
「僕だつて皆な嫌ひだ。」
「嫌ひだ、で済むうちは好いが……」
「清親なんて云ふ奴は、何て厭な奴だらう。」
「貴様がそんなことを云つたつて仕様がないぢやないか――」
そんな話から、いつか友達のことに移つて行つた。イギリス人に親しい二人の友達を持つてゐることなどを父は話したりした。
その時分同人雑誌の会合が毎月一度宛あつて、彼は厭々ながら稀れに上京した。――どうしたハズミだつたか、父は、来て呉れるやうな友達があるんなら、一辺此方へ皆なを招待したらどうか
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