点頭きながらうつむいてしまつた。滝本が追求すると、理由は好く解らないけれど、太一郎や堀口が何か七郎に向つて悸すやうなことを云ひに来たので――といふやうなことを苦笑を浮べて八重が云つた。
「ラツキーの代りに、リリイは、今は此方に任してあるが――ほんとうは、もう篠谷の持物に変つてゐるんですつて!」
「そんな馬鹿なことはない。七郎が好人物だと思つて、彼奴等は何処まで人を喰つた真似をするんだらう。――ラツキーを取り戻すためには、ちやんと、あの――」
 と滝本は思はず口走つて、
「俺達が蔵から持ち出した鎧櫃やら巻物を売つた金を……」
 云ひかけて、何も知らない八重に向つて亢奮の気色を示し過ぎたことに気づいて、
「ねえ、竹下――酷《むご》いことをする人達だな、どこまでも――」
 と、汀の石に腰を降して鯉を眺めてゐる竹下に呼びかけた。
「何うしても俺は、太一郎といふ奴を擲《なぐ》らずには居られなくなつた。」
 竹下は立ちあがつて、腕を滝本の眼の先へぬツと突き出した。
「関はず、此方でリリイを出すことに仕ようぢやないか。」
 滝本は微かな震へ声で唸つた。
「然し、それがもう太一郎の持馬と変更されてゐる
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