と堀口は云つた。百合子は、笑ひを怺えるために唇を噛んでゐた。
「見よ、彼の面上に漂ふ真実味に欠けたる微笑の有様を――」
 と滝本は続けた。「彼方に見えるあの青々とした蜜柑畑の丘、そしてあの丘の下にある吾々の家や畑や、または町の銀行に預けてある吾々に属すべき幾種類もの株券――それらの財産の凡てを、他人の名前に書きあらためて――」滝本は、母と云ふべきところを「他人」と云ひ換へたのである。「更に余をこの地から放逐せんと計《くわだ》てた邪悪の心の持主である。そして、お前が、余の妹であるといふ事実は知らぬ筈なのだけれど――」
「守夫君――」
 と堀口は滝本の手を引いて「斯う云ふことをローラさんに云つて呉れないか――。たつた一人で斯んなところへ訪れて来て定めし心細いことだらうが、此処はあなたの第二の故郷も同然のところだし、吾々がついてゐれば決してもう心配することは要らない、優しいお母さんもゐる、親切な私といふをぢ[#「をぢ」に傍点]さんもゐる――どうぞ、もう、何の遠慮もなく何時までゝも居て呉れるように――と。」
「あなた達は一体ローラのことを何う思つてゐらつしやるんですか?」
 滝本は思はず気色
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