一ト通りは――」
「そんなら好いが、若し巧く行かなかつたら君通訳して呉れないかね。」
ローラは、酒樽などが据えてある店の腰掛に百合子と並んで、あたりをきよろ/\と見廻しながら、此処は何う云ふ類ひの家なのか? などゝ百合子に訊ねてゐた。百合子が、酒場《バア》とホテルを兼ねて、そして村人達のクラブにもなつてゐるところだ――などゝ説明してゐた。
「ローラさんですか、私は滝本の縁家先の者でして。」
堀口が、ローラの長い旅の労を丁重にねぎらつたが、相手にはさつぱり通じぬ模様だつた。堀口は、てれて、これあ困つたな……と苦笑しながら、
「おい守夫さん、何とか云つて呉れよ。」
と救けを求めた。滝本は、不図堀口に対する積る鬱憤を晴すのは斯んな時だと思つたので、ローラに向つて、
「この男は――」
と、様子だけはおだやかにして、堀口を説明した。「怖るべき悪人としてお前に紹介するが、吾々のフランクが亡くなつた後に、一切の吾々の権利を奪つて、吾々を窮地に陥入れようとしてゐる憎むべき人物なのである。心に思つてゐるまゝの事を決して口に出して云はぬ稀大の嘘吐《うそつ》きである。要心せよ。」
「有りがたう。」
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