出してゐたさうだよ。俺は、それを聞いた時には太一郎達が何か新しい魂胆を回らせてゐるんだらうと思つたが――」
 二人が、荷物の支配などをしながら篠谷に対する憤懣からついつい荒つぽい言葉を取り換してゐると、何時の間にかローラが傍らに来てゐて、滝本と七郎が、
「よしツ、もう二度とラツキーは渡しつこないから!」
「あんなべら棒な話つてあるものか!」
 さう云つて言葉が止絶れると、ローラは酷《ご》く熱心な眼を輝かせて、さつきから二人の会話を非常に注意深く聞いてゐるのだが、さつぱり意味が解らない、二人は何か争ひを始めたのか? 「あいつ」といふのは「彼《ヒイ》」の意で「俺《おい》らはなあ!」といふのは「自分が考へる処に依ると」といふ意味だと百合子が教へたが、その他の「べら棒奴」とか「あん畜生奴が」等と云ふのは(それがまたこの時非常に屡々二人の間で使はれてゐた。)一体何詞に属するのか? と滝本に質問した。一体滝本は、何事に依らず説明をするといふ業が酷く不得意だつたが、この時は七郎から篠谷の噂を聞いて向つ肚が立つてゐて、凡そローラの心持とはうらはらだつたせゐか、面倒臭さうに、それは単なる感投詞だ! と答
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